愛して、未来
美容室に行った際、カルテを書いたため住所や電話番号まで知られてしまっている。
あんな風に口説かれたのは恋を意識する年齢になってからは初。
好きです、一目惚れです、それならわかる。
でも、客である私の髪をわざと余分に切って付き合おう、償わせないか、なんて前代未聞。
当然、キッパリ拒否。
でも、力丸は……
「 唯ちゃんの髪に惚れたから 」
美容師の力丸の言葉。
過去にも美容師だけでなく、髪を誉められる事が多い私。
それだけでは私はなびかない。
でも…
切って肩下5センチになった髪に、手指を通してキスするように唇へ……
鏡越しに見ていて、私の心臓が飛び跳ね、ドキドキとしてしまった。
「 ね、付き合ってみよっか 」
鏡越しに、私を見て言う力丸に頷いてしまった。
この日から1年、私は高校3年生。
密かな夢は美容師。
力丸には秘密。
そして、私と力丸の間には越えない壁がある。
26歳の力丸、私はまだ高校生。
キスまでしかない恋人なのです。
しかも、重ねるだけ。
鳥?
鳥のマネ?
それほど、私を子供扱いしているとか思えないのです。