ほんもの。
プロローグ
人より多くのものを持っている自覚はあった。
襖を開けて入ってきた女を見上げる。
「……え」
先に顔を強張らせたのは向こうだった。これは一体どういうことか、と目で聞いてくる。
その後すぐに相手の母親らしき女性と近所で有名なお見合いおばさんが入ってきた。
急に家に来て、料亭で飯を食おうと言ってきた母親。そういうことか。
月白十和子も納得いかない顔をして座っている。
勝手に自己紹介をさせられ、「あとは若い二人で」なんて定型文を言い渡された。三人が部屋から出ていく。
「はじめまして」
「……はじめまして」
「休日は何をして、」
「おい、この茶番をいつまで続けるつもりだ」
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