ほんもの。
ダメになって欲しい。
自分の価値を決めるのは、自分だ。
そんなことを言うのは、強い人間だけだと思ってた。
木枯らしが吹いている。
マフラーに首を埋めると、「寒くなってきたな」と隣で話す声。
「お鍋の後の雑炊が食べたくなるね」
「気持ちは分かる。夕飯鍋にするか……って言いたいところだけど、家に土鍋がない」
休日の安藤の耳にはピアス、中指には指輪。それが似合ってるし体格も良いからチンピラに見えるんだけれど、本人は気にしていないらしい。
「つか、話しかけられる方が面倒だ」と前にうんざりとした顔で言っていたのを思い出す。