ほんもの。

あ、笑い方が安藤弟に似ている。

『だから、ちょっと切羽詰まった感じだったんですね』

『言うことはちゃんと聞くんだけどね、自分勝手だから。駄目なこと嫌なことはちゃんと言ってあげてね』

『私もつられて結構言うようになりました』

『あらあら』

忙しい合間を縫って来てくれたのだろう。腕時計を一瞬見て、こちらを向いた。

『泉のこと、どうぞよろしくお願いします』

『こちらこそ。よろしくお願いします』

頭を下げ合った。

安藤の横顔を見ながら思い出す。何時かと枕元の携帯に手を伸ばした。

その手をぱしっと掴まれて、超驚いた。

「び、っくりした……」

「ん」

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