ほんもの。
午後には旅館を出発した。
遅番だという私服のみゆきさんと、安藤母が見送ってくれた。
荷物をトランクに入れて、車の運転席に乗り込む。
「あ、忘れてた」
「え、忘れ物?」
隣に乗り込んだ安藤が思い出したように話す。
でもシートベルトをするのを見て、疑問が浮かぶ。
ポケットから財布を出して、何かを取り出す。その手の先を見ていると、手首を掴まれた。
ぱしっと手のひらに乗せられたカード。
「クリスマス、忙しくて渡せなかったから」
「これ……」
見たことがある。もちろん、何度も。