ほんもの。
安藤の家のカードキーだ。
「たぶんお互い時間が合わないことの方が多いと思うけど、好きなときに来て」
「私……何も用意してない」
「ああ、そういえば十和子の家に行ったことがない」
「……あ、そうだっけ」
それより先に私は自分の実家に連れて行こうとしているらしい。
カードキーを受け取って、ちょっと考えてしまう。
「やめる? うち来るの」
「いや、俺はカニ祭りに参加する気満々だけど」
私のシートベルトを引っ張って、締めてくれた。ありがとう、と言うと「いいえ」と却ってくる。
エンジンをかけて車が発進した。