ほんもの。

昨日みたいに言いたくないなら安藤は言わないと分かって、訊く。

「よく覚えてないから、どうも思わないな」

「そっか」

「ただ、生きてたらどうだろうとは、少し思ったりする」

色々あったのだと思う。

今はあっさりとこう答えている安藤だけれど。
きっと、色々考えたことがあったはずだ。

私は安藤にこう言った。
『何からも奪いたいって気持ちになったことは無いんだろう』って。

そんなの、当たり前だ。安藤は奪われた方で、その気持ちを痛いほど知ってる。

「どうして、安藤は私についてきてくれたの?」

「何の話だよ」

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