ほんもの。
信号で止まる。安藤は一度行っただけなのに、私の家の位置を覚えているらしい。流石神様仏様安藤様。
「三島さんに会いに行くって言ったとき」
「今の話の流れでどうしてそこに繋がんだよ」
「だって、嫌じゃなかったの? 私は不倫してたんだよ」
不倫って響き、自分で言うととても重たい。訴えられたら、きっと勝てない。
「前も言ったけど。馬鹿な女だなとは思って見てた」
「……ですよね」
返す言葉もこざいません。信号が青に変わる。
安藤がハンドルを持った。
自動販売機の前で安藤が話しかけてきたとき、私は馬鹿だと思われていたらしい。