ほんもの。

信号で止まる。安藤は一度行っただけなのに、私の家の位置を覚えているらしい。流石神様仏様安藤様。

「三島さんに会いに行くって言ったとき」

「今の話の流れでどうしてそこに繋がんだよ」

「だって、嫌じゃなかったの? 私は不倫してたんだよ」

不倫って響き、自分で言うととても重たい。訴えられたら、きっと勝てない。

「前も言ったけど。馬鹿な女だなとは思って見てた」

「……ですよね」

返す言葉もこざいません。信号が青に変わる。
安藤がハンドルを持った。

自動販売機の前で安藤が話しかけてきたとき、私は馬鹿だと思われていたらしい。

< 183 / 235 >

この作品をシェア

pagetop