ほんもの。

広々とした空間を見て、安藤は再度黙る。

土地はあるけど、家を建てるお金もないので駐車場になったとかならなかったとか。とりあえず来客者にはここへ駐車してもらっている。

「十和子さん、十和子さん」

「なに?」

「いや、練習中。十和子みたいに噛まないように」

「ひどい」

いつ買ったのか、きちんと菓子折りを持っている安藤。

玄関前に着くと、母が既に立っていた。

「いらっしゃい、わざわざ来てくれてありがとうございます。ささ、あがって」

娘におかえりと言う前に、その恋人の出迎え。

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