ほんもの。
その頬へ指を押し込みたい思いを抑えながら、立ち上がる。
場所とか時間とか格好悪いだとか、もう考えない。
「どうしたの?」
「持ってくる」
「うん?」
何故か十和子も立ち上がり、俺の後を付いてくる。カルガモの子供みたいだ。
見せたら、どんな顔をするだろう。
笑ってくれたら、良いなと思う。
「あいしてる」
ほんものを探していた。
ずっと、探していた。
貴方の中に、それはあった。
ほんもの。 END.
20180314