君は太陽
そう思いながら、ずれを直そうと手を掛けると、そこに別の紙がはさまっていた。
「あれ? 何だろう」
首を傾げながら開けると、そこにはふたりの女の人が笑っている写真が入っていた。
夕陽をバックに、幸せそうな笑顔で写真に納まっている。
右側の女性は、私の記憶よりもちょっと若いけれど、母だろう。
隣の女の人は誰なんだろう? そう思いながら写真の裏を見ると、『虹島にて。由恵ちゃんと』と母の字で書かれてあるのを見つけた。
「お母さんの若い頃の写真なんて、初めて見た」
恐らく母は、東京から出てくるときに思い出をすべて処分したのだろう。
今まで写真なんて、一枚も見たことなんてなかったから。
『ねぇ、結衣。私が死んだら、この写真を飾っていてね』
亡くなる前の母の言葉を思い出す。
母は、この写真を飾るように私に言っていた。
私も母の遺志を守ってそのまま飾っていたけれど、その中に、母は唯一の自分の思い出を隠していことに気づく。
たった一枚。母の大事な思い出の写真。
「虹島、か……」
瀬戸内海に浮かぶ小さな島だったと記憶している。
十年ほど前に、虹島を舞台とした映画が公開されて、大ヒットしたときに、夕陽が綺麗な島として紹介されていた。
もちろん、母の写真にもオレンジ色の太陽が写っている。
その写真を見ていると、なんだかとても心が洗われるようで、気持ちが落ち着いてくるのを感じていた。
ここに行けば、松嶋くんとのことを、しっかりと考えられるかも知れない。
「お母さん。私、ちょっと出かけてくるね」
写真の中の母に笑顔を向けて、私はゆっくりと立ち上がり、パソコンの電源を入れた。
今思うと、何でこの島に引き込まれたのかはわからない。
だけど、今の私には、この風景を感じることが必要なんじゃないか、そう思えていた……。
「あれ? 何だろう」
首を傾げながら開けると、そこにはふたりの女の人が笑っている写真が入っていた。
夕陽をバックに、幸せそうな笑顔で写真に納まっている。
右側の女性は、私の記憶よりもちょっと若いけれど、母だろう。
隣の女の人は誰なんだろう? そう思いながら写真の裏を見ると、『虹島にて。由恵ちゃんと』と母の字で書かれてあるのを見つけた。
「お母さんの若い頃の写真なんて、初めて見た」
恐らく母は、東京から出てくるときに思い出をすべて処分したのだろう。
今まで写真なんて、一枚も見たことなんてなかったから。
『ねぇ、結衣。私が死んだら、この写真を飾っていてね』
亡くなる前の母の言葉を思い出す。
母は、この写真を飾るように私に言っていた。
私も母の遺志を守ってそのまま飾っていたけれど、その中に、母は唯一の自分の思い出を隠していことに気づく。
たった一枚。母の大事な思い出の写真。
「虹島、か……」
瀬戸内海に浮かぶ小さな島だったと記憶している。
十年ほど前に、虹島を舞台とした映画が公開されて、大ヒットしたときに、夕陽が綺麗な島として紹介されていた。
もちろん、母の写真にもオレンジ色の太陽が写っている。
その写真を見ていると、なんだかとても心が洗われるようで、気持ちが落ち着いてくるのを感じていた。
ここに行けば、松嶋くんとのことを、しっかりと考えられるかも知れない。
「お母さん。私、ちょっと出かけてくるね」
写真の中の母に笑顔を向けて、私はゆっくりと立ち上がり、パソコンの電源を入れた。
今思うと、何でこの島に引き込まれたのかはわからない。
だけど、今の私には、この風景を感じることが必要なんじゃないか、そう思えていた……。