君は太陽
「ああ。俊美さんの願い通り、幸せだったよ」

お母さん、よかったね。お母さんの願い通り、幸せでいてくれていたよ。

「よかったな、結衣」

松嶋くんの優しい声に、私もこらえていた涙が溢れだす。

そっと抱き寄せられた松嶋くんの胸の中で、私は母を思ってうれし涙をこぼした。






「蒼大くん、大丈夫だよ。部屋、空いているって」

私の泊まるホテルのフロントで、逢沢社長がニコニコと笑う。

虹島から出港するフェリーの最終便が終わってしまったので、逢沢社長と松嶋くんも、ここに一泊することになった。

夏休み前のこの期間、運よくホテルも部屋が空いていたようで、ふたりもここに宿泊することになりそうだ。

ソファに座り待っていた私と松嶋くんの前に、逢沢社長がやってくる。

すると、持っていたカードキーを松嶋くんに手渡し、私に話しかけた。

「結衣ちゃん、悪いけど部屋の荷物を持って、蒼大くんと同じ部屋に行ってもらえないかな?」

「え?」

意外な言葉に松嶋くんと顔を見合わせる。

「残念ながら、ダブルの部屋しか空いてなかったんだよ。私と結衣ちゃんの父娘水入らずでもいいんだが……」

その言葉に思わず固まってしまう。

さすがにこの二十八年、会ってもなかった父親と突然同じベッドで寝るのは、私もどうすればいいのかわからない。

「蒼大くんと私、というのも変な感じだろう?」

「そうですよね。そうなると、俺と結衣が一番自然ですよね。さ、結衣。行こう。部屋は何階?」

「えっと、四階だけど……」

急に張りきり出した松嶋くんの後ろを、急いでついて行く。

「じゃあ、後で二階のレストランで合流しよう」

「わかりました」

四階の私が泊まっていたシングルの部屋に着き、荷物を取り出した後、逢沢社長と松嶋くんはテキパキと夕食の時間の打ち合わせを行っていく。

それからエレベーターホールへ戻り、ひとつ上の五階の部屋へと入った途端、急に緊張が解けて、私はベッドの端にフニャリと腰を下ろした。

「結衣、大丈夫?」

「まだ追いつかないよ。松嶋くんが急に現れただけならまだしも、父親まで見つけだしてくるなんて……」

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