君は太陽
蒼大くんのお母さんは私を腕から解放した後、私の顔をじっと見つめて、泣きそうな顔になった。

「本当に、俊美ちゃんにそっくりね……」

「母を、知っているんですか?」

母の名前に思わず反応すると、ゆっくりと蒼大くんのお母さんはうなずいた。

そして、カバンから一枚の写真を取り出して、私に渡してくれる。

「俊美ちゃんとは大学時代の同級生で、親友だったの」

「この写真……。もしかして、由恵さんですか?」

「ええ。でも、どうして私の名前を?」

首を傾げる蒼大くんのお母さんへ、私も自分のカバンから写真を取り出す。

それは、今私の手にある写真と同じもの。

「母の唯一持っていた、昔の写真がこれなんです。これを見て、虹島へ行ってみようって思いました」

「俊美ちゃんが、この写真だけを?」

「はい。多分、他のものはすべて、東京から離れるときに処分していたんだと思います」

その言葉に、少しだけ蒼大くんのお母さんは寂しそうな顔をした。

「俊美ちゃんと逢沢くんが出会うきっかけを作ったのが、私だったの。だから、俊美ちゃんがいなくなってから、私のせいじゃないかって思ったこともあってね」

「それは違うよ。すべては私の責任なんだから」

いつの間にか私たちの元へと戻ってきていた父が、はっきりとした口調で言った。

「由恵さんが悪いと思うことなんて、何一つないよ。私は、君のおかげで俊美さんと一緒に過ごせることができて、幸せだったのだから」

「ありがとう、逢沢くん」

そう言って微笑んで、蒼大くんのお母さんは、封筒を取り出した。

「東京から離れる前、最後に俊美ちゃんに会ったときにも、そうやって言われたわ。『由恵ちゃんが悪く思うことなんてひとつもないんだからね』って。そして、八年前に、この手紙を受け取ったのよ」

松嶋由恵様、と書かれた封筒の字には見覚えがある。

「これ、母からの手紙ですよね?」

「ええ。結衣ちゃん、読んでみて」

コクリ、とうなずき、私は封筒の中身を開ける。

そこには、母の字で思いがけないことが書かれてあった。


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