蓼科家物語 四女 桜和の話
+×+×+×
「おー!春、よくきたなぁ」
俺が病室に入るなり、笑顔で迎え入れるじいさん。もう、重病で入院したことなんて忘れてんな……
春「大きな病気にかかったんじゃないんですか?」
「いや、えっとごほん。ごほん、ごほっ」
春「………」
右「会長、すみません。最初からバレてます」
俺がしらけた顔でじいさんを見てると、右近が横からじいさんに耳打ちをした。
まあ、聞こえてるけど……
「なに⁉︎それを早く言わんかい!がっはっは!」
大きく口を開けて笑いながら右近の背中をバシバシたたく。
右「会長、いたっ……いたいです」
「おお、すまんすまん」
じいさんから解放された右近は腰をさすりながらドアの近くまで下がった。
春「……それで、腰の方は大丈夫なんですか?」
「ああ、まだちょっと痛むけどな。そんなことは置いといてだな。じじいの楽しみをちょっと見てくれ」
そう言って、じいさんが俺の目の前に広げたのは5枚のお見合い写真だった。
春「……会長。申し訳ありませんが、まだ結婚は……」
「お前はずっと、まだ結婚は…ってためらってばっかりで、私はつまらん!私はお前が15の時からずっとこうやって見合いしろと言っとるのに!!」
春「俺には婚約者がいるじゃないですか」
「お、自覚はあるのか。ただお前はあの子とも進展がないじゃないか!あの子が今どこにいるとか知っとるのか?」
春「………………」
あいつが俺を追いかけることは度々あっても俺があいつを追いかけるなんてこと……ありえねえな……
「それがダメなんだ!はあ………………はやくじいじと呼んでくれるひ孫がほしい…。できれば、女の子がいいのう…。お!そうだ、そうだ思い出した。春、お前最近、気になってる子がいるとか聞いたぞ」
春「……右近」
俺が名前を呼んで右近をにらんだ瞬間、右近は凄まじい勢いで目をそらした。
まったく、外に出る理由なんて一度も話したことなかったのに、どうやって調べたんだから…
ガラッ
「一条さーん。検温に来ましたよ」
そんな時、ちょうどよく看護師が入ってきた。
「おーおー、さゆりちゃん」
じいさんはその看護師の腰に手を回した。
春「……会長。もしかして……」
「はっはっは。この子は、私専属の看護師だ」
「黛 さゆり(mayuzumi sayuri)です」
看護師は俺に向かって軽く礼をした。それにしても2人の距離が近すぎる。
春「手、出してませんよね」
「はっはっは。当たり前だろ。幾晩も共にした」
春「………」
このセクハラじいさんは……とか思っていたら看護師がすかさずフォローを入れた。
「さすがに、冗談ですよ。一条さん、具合がよろしいのでしたら、中庭に散歩に行きませんか?ご家族の方もいらっしゃいますし」
「おお、いくか、春。次は、真面目な話をしようか」
先程まで、看護師にデレデレしていたじいさんの目が、急に鋭くなった。
歳を取っても威厳というものは損なわれないらしい。
春「…はい」
俺は背筋を伸ばして、重い腰を上げた。
「おー!春、よくきたなぁ」
俺が病室に入るなり、笑顔で迎え入れるじいさん。もう、重病で入院したことなんて忘れてんな……
春「大きな病気にかかったんじゃないんですか?」
「いや、えっとごほん。ごほん、ごほっ」
春「………」
右「会長、すみません。最初からバレてます」
俺がしらけた顔でじいさんを見てると、右近が横からじいさんに耳打ちをした。
まあ、聞こえてるけど……
「なに⁉︎それを早く言わんかい!がっはっは!」
大きく口を開けて笑いながら右近の背中をバシバシたたく。
右「会長、いたっ……いたいです」
「おお、すまんすまん」
じいさんから解放された右近は腰をさすりながらドアの近くまで下がった。
春「……それで、腰の方は大丈夫なんですか?」
「ああ、まだちょっと痛むけどな。そんなことは置いといてだな。じじいの楽しみをちょっと見てくれ」
そう言って、じいさんが俺の目の前に広げたのは5枚のお見合い写真だった。
春「……会長。申し訳ありませんが、まだ結婚は……」
「お前はずっと、まだ結婚は…ってためらってばっかりで、私はつまらん!私はお前が15の時からずっとこうやって見合いしろと言っとるのに!!」
春「俺には婚約者がいるじゃないですか」
「お、自覚はあるのか。ただお前はあの子とも進展がないじゃないか!あの子が今どこにいるとか知っとるのか?」
春「………………」
あいつが俺を追いかけることは度々あっても俺があいつを追いかけるなんてこと……ありえねえな……
「それがダメなんだ!はあ………………はやくじいじと呼んでくれるひ孫がほしい…。できれば、女の子がいいのう…。お!そうだ、そうだ思い出した。春、お前最近、気になってる子がいるとか聞いたぞ」
春「……右近」
俺が名前を呼んで右近をにらんだ瞬間、右近は凄まじい勢いで目をそらした。
まったく、外に出る理由なんて一度も話したことなかったのに、どうやって調べたんだから…
ガラッ
「一条さーん。検温に来ましたよ」
そんな時、ちょうどよく看護師が入ってきた。
「おーおー、さゆりちゃん」
じいさんはその看護師の腰に手を回した。
春「……会長。もしかして……」
「はっはっは。この子は、私専属の看護師だ」
「黛 さゆり(mayuzumi sayuri)です」
看護師は俺に向かって軽く礼をした。それにしても2人の距離が近すぎる。
春「手、出してませんよね」
「はっはっは。当たり前だろ。幾晩も共にした」
春「………」
このセクハラじいさんは……とか思っていたら看護師がすかさずフォローを入れた。
「さすがに、冗談ですよ。一条さん、具合がよろしいのでしたら、中庭に散歩に行きませんか?ご家族の方もいらっしゃいますし」
「おお、いくか、春。次は、真面目な話をしようか」
先程まで、看護師にデレデレしていたじいさんの目が、急に鋭くなった。
歳を取っても威厳というものは損なわれないらしい。
春「…はい」
俺は背筋を伸ばして、重い腰を上げた。