蓼科家物語 四女 桜和の話


「よし…落ち着いたな」

数分後、少女の顔から歪みがなくなった。

「あんたのおかげだ。ありがとう」


春「いえ……って……あれ?」

この顔どこかで……

「気づいてなかったのか?数日前、家の前で会ったんだけど」


ああ、あの時のすごい敵意むき出しにしてた男だ。


春「医者…だったのか、名前何?」


暖「結城暖弥(yuuki haruya)。そっちは?」


春「一条春。……」


なんか似てる。と思ったのは俺だけじゃないだろう。


暖「なあ…」

春「……ん?」

暖「桃葉……じゃなくて、桜和狙いなの?」

春「桜和……ってこの子?」

暖「ああ。桃葉の妹。ここに入院してる」

春「そうか…。うん、よくわからないけど、たしかに俺はこの子に惹かれてる。あと、桃葉…さんって暖弥の彼女かなんか?」

暖「……奥さん。手、出すなよ」

春「出さねえよ」


なんだか話しやすい。名前どころか性格まで似ているかもしれない。


暖「んーー、じゃあ俺いなくなるから桜和起きたら呼んでくれる?これ、番号」

春「ああ、ありがとう」

暖弥は少し微笑んでから病室を出ていった。
もらったメモの内容を確認して、そのあと桜和をじっと見つめた。



ああ、たしかに、間違いない。あの子だ。

でも、家の前で待ち伏せしたり、こうやってちょうどいいタイミングで現れたり、なんか本当にストーカーみたいだな。


などと、色々考えを巡らせていると、目の前の少女が目をゆっくりと開けた。


桜「暖兄?……」


上半身を起こして、顔だけを俺の方に向けて訝しげにつぶやく。


桜「…………誰?」



春「……お前が倒れてたの運んだ。でも、その前に会ってる。雪の日に、助けてもらった、お前に」


桜「ん?んーーーーーー?んーーーーーーーーーーーーー」


声の調子を変えながら、俺を舐め回すようにみ始める。


桜「んーーーーーーーー……あっ!思い出した!!営業妨害の人っ」


春「あー、うん、それ」


桜「怪我大丈夫になった?」


春「…おかげさまで」


桜「病院きたのはあの時の怪我?」


春「いや……違うけど。あと、ちょっと待ってて」


話してるうちに桜和が目を覚ましたら電話してといった暖弥のことを思い出し、電話をかけた。コール3回で電話が繋がった。


春『あ、暖弥。桜和起きた』


暖『早かったな…。桜和平気そう?』


一回耳からスマホを話して桜和と目を合わせた。


春「桜和、体調悪くないか?」

桜「うん」


暖『聞こえた、大丈夫そうだな。じゃあ、病室まで運んどいてくれる?あとは春に任せる。面会時間終わるまではいてもいいから』

春『ああ、わかった』



ここまではなして、電話を切った。













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