し ろ う さ ぎ
全然…知らない
あたしだけに向けていた刺々しい視線は斎川君をも捉えた。
「本当のことを知られるのが怖いから?
だから……夏稀君は葵と帰れない、そうでしょ?」
「……違う」
「千鶴さん、最初に言っておきますね。
夏稀君のことを知っていけばいくほど、どうせあなたも離れていくんですよ」
「……葵、それ以上言っ……」
「葵は違いますから。
何があっても夏稀君の傍にいる自信があります」
「葵!!」
斎川君がこんなに声を荒げるのは初めてだった。
だからこそ、そんな事ないって……
胸を張って言わなきゃいけないのに……。
あたしは葵ちゃんの言葉に俯くことしか出来なかった。