し ろ う さ ぎ


それから本当に少しの間だったけど二人で一緒に座って、クラスメートの行き交う波が落ち着いてきた頃に歩き出した。


皆に追い付くまでは手を繋いでいようかな……?



「……夏稀君」



そう思っていた幸せな時間は容易く終わりを迎えた。


校門にいたのは……なんと葵ちゃん。



「……葵……っ」



これは斎川君も予想外だったのか手を繋いだまま固まっていた。


繋いだままの手からも分かる、斎川君の力んだ感触に少しだけ怖くなる。




「……なんで、ここに……」


「夏稀君に言ったよね。
一緒に……帰ろうって」



そう言って歩み寄ってきた彼女は斎川君の繋いでいない手をそっと取る。


あたしと葵ちゃんとに挟まれた斎川君は……どうするんだろう。


端から見ても完全に修羅場な光景……。

誰かに見られてまたややこしくこじれなきゃいいんだけど……。



「……笠井さん、ごめん」
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