し ろ う さ ぎ
斎川君はあたしの繋いだ手をゆっくりほどいて葵ちゃんに両手を重ねた。
……ドクン、と鼓動が苦しく跳ね上がる。
ねえ……斎川君、あたしはここだよ……?
「……葵。
オレは笠井さんのことが好きなんだ。
だから……葵とは帰れない。
それが本当の理由だから」
小さい子に言い聞かすような口調に特別な好意は読み取れなくて不覚にもホッとしてしまう。
一方の葵ちゃんは斎川君の言葉に項垂れていた。
全く関係ないあたしなんだけど……
どうしてか、どうしようもなく……罪悪感を感じてしまう。
あたしがいるから……葵ちゃんは苦しんでる。
考えちゃ駄目な方にばっかり物事を考えちゃう……。