し ろ う さ ぎ
「……い、いえ!
あたしの方こそ……馬鹿なことを……!」
彼が居なかったら……今あたし……
そう思うと途端に足元から這い上がってくる鮮明な恐怖に足が震える。
「本当……って言ったら失礼だけど、大丈夫?
尻餅つかせたし……怪我とかしてない?」
「そ、そんな……!
むしろそこまでして止めてくれてありがとう……ございます……!」
「いや、無事なら良かった」
くしゃっと顔を綻ばせて笑うその表情は母性本能をくすぐられるような可愛さがあった。
「あ、あの何かお礼を……!」
「ありがとう……って言いたいとこなんだけど、ごめんな?
今日はこれから予定あって」
「あ、いたいた。
って何してんだよナンパか~」
「将希が勝手にはぐれたんだろーが!」
「翔太が、だろー!」