し ろ う さ ぎ
そう言って不意を突かれたような笑みを滲ませた葵ちゃん。
「夏稀君、あたしはもう大丈夫だから。
行くよ」
「でも……」
「え?」
どこかへ行くらしい口振りの葵ちゃんとどこへ行くのか知っているらしい斎川君とに思わず疑問の声が洩れた。
「葵、これからのことを話すのに今から父親に会うんだけど……
心配でどうしても放っておけなくて……」
「そ、そうだったんだ……。
それじゃあ……っ」
「もう一人で大丈夫ですから」
まだ少し未練を残すような響きで、でもその決断に後悔は無いのか、立ち上がった葵ちゃん。
「それじゃあ」