し ろ う さ ぎ
改めて目の前には不満げな顔で頬杖をつく紗耶の姿が。
「なにー?
またなんか斎川君とのノロケでも聞いてほしいのかー、んー?」
「ち、違う違う……!
ただ……ちょっと、ね……」
「なによー、その勿体ぶった言い方はー」
「な、なんというか……!
気になることがあって……」
「気になることー?」
「じ、実は……」
斎川君が我が家に来てから数日が経った。
日々は怖いくらい何も変わらず、ただ幸せだった。
学校でも普段通り。
でも時々、斎川君は一人で何かを見つめてる。
そんな空間にも慣れてきた時、あたしはふと発見したことがあった。
「……両腕の痣?」
「……うん。
それも一つじゃなくて幾つも」
「……ぶつけた……っていうのも不自然かー」
「……明らかに危害を加えられたみたいな痣で……心配だったんだけど……」
「何も聞かなかった、聞けなかった、と?」
「……はいぃぃ……。
何とも情けない……」
あたしも、そりゃあもちろんよっぽど気になった。
彼氏の両腕に痣なんて。
でも、聞けなかった。
切り出す勇気がどうしても出なくて……。