し ろ う さ ぎ
開け放たれていたはずの心の扉はまた鈍い音を響かせる。
それは、その扉を閉ざすため。
待って、と手を伸ばすもう一人の自分。
そんなあなたがいるから……あたしは駄目なままなんだ。
やっぱり上手になんてやれっこない。
二人の自分が同時に存在することなんて出来ない。
変われない、不器用な本当の自分はいらない。
皆にそれなりに好かれて空気の読める自分じゃなきゃ……。
きっとそんな自分じゃないと斎川君にだって好かれない……。
「……ごめんね……千鶴。
オレはもう……やり直せない」