し ろ う さ ぎ


力になんてなれないかもしれない。


それでも……心が行けと叫ぶ。





「っもしもし!?」


「ちょ……っ!
どしたのそんな大声出して……」


「ごめん……!
い、今ちょっと立て込んでて……!」


「わ、分かった分かった……!
あたしも手短に済ませるから……!」




急いで斎川君の元に向かおうとしたあたしに待ったをかけるように電話を掛けてきたのは紗耶だった。


おかげで少し冷静になれて、そういえば斎川君の家を知らないことに気付けて……。




「ど、どうかした……?」


「実は……斎川君のことで……」


「……斎川君?」


「うん……。
あたしもやっぱり気になってSNSとかで友達にそれとなく聞いてみたんだ……」


「そ、それで……?」




少しの、沈黙。

急かすような鼓動の音だけが頭に響く。

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