し ろ う さ ぎ



でもなんか……張り詰めていたものに穴が空いたような気分になった。


……落ち着け。

大丈夫。

きっと……彼は生きてる。




「今から夏稀お兄ちゃんの家に行ってくるだけだから。
すぐに帰ってくるよ」




二人の頭に手を置いてそう言う。


その時、紗耶から住所が送られてきたのか携帯が震えた。



それを合図にあたしは走り出した。


斎川君は……付き合っていた時から家の話はもちろん家なんて教えてくれなかった。


何でだろうって……それくらいにしか考えてなかった。


学校にもあんなに早く来てたのは……家にいたくなかったからなのかな。


あたしの家に来てくれた時も……あの笑顔は嘘なんかじゃなかったんだ。


全部……斎川君は本物だった。
< 307 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop