し ろ う さ ぎ
呼び掛けが通じたかのように……
ほんの少し、眉根を寄せて唸った斎川君は……ゆっくり目を瞬かせた。
「……笠井、さん……」
「……良かった……!
また……呼び方戻ってるよ……?」
本当……良かった……。
どうにか斎川君の気を紛らわそうと発したその声はちょっぴり震えていた。
斎川君はそんなあたしに気付いたのかは分からないけど……
困ったように笑っていた。
「今日の所は大事を取ってここで休んでもらいましょうか。
退院は明日ということで」
「分かりました……」
「本当に良かったですよ。
お父様も意識が戻られたようですし。
少し様子を見てきます」
「ありがとうございます」