し ろ う さ ぎ


斎川君の声はすごく静かで……。

痛みなんて遠い過去に置いてきてしまったような……。



「暴力を振られるのはオレが生まれてきたからだって思ってた。
だから誰にも言えなくて……。
でも今になって分かってきたこともあってさ」


「……分かってきた……こと?」


「うん。
父親も父親できっとそれが駄目なことだって分かってたはずだった。
でもそのことを認めるだけの余裕が心に無かったんだろうなーって」




そう言って斎川君は病室のベッドのシーツを握り締めて、クシャクシャとシワになった。


それはまるで整理がつかないあたしの心の中みたい。


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