し ろ う さ ぎ

「そんな時、父親は一人で引っ越すって急に言ってきてさ。
しかもそれが母親の地元。
父親はよく死にたいって口癖みたいに言ってて……。
もしかしたら引っ越し先で死ぬつもりなんじゃないかって……」



だから斎川君はそんな父を止めるべく……
学校を説得してどうにか転校出来た、と。


母親の地元であり、あたしの住んでいる街……。

そんな場所であたし達は出会って、互いに恋に落ちた。



「きっとこのまま離れれば父親は死ぬ。
心のどこかでそう感じてた。
何度も自殺未遂を繰り返してたし……」




やっぱり……紗耶の聞いた情報は本当だったんだ……。

斎川君は誰にも言ってなくてもこんな個人の情報はいつの間にか流れ出ている。



「……やっぱり見捨てられなかったんだ。
家族……だから。
育ててくれた恩っていうのかな。
情もあったから……。
だから例えば死ぬ時は……オレも一緒でもよかったかなって……」
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