し ろ う さ ぎ



─────────…世の中にはなんで生きてるんだろうって思う人がいたりする。



そう……あたし、みたいな?





「危ないって!!」


「……っえ……?」


「え、じゃなくて!」




家のことも人間関係で上手くいかなくて。


いざ人を好きになってみても結論、振られたり。


何をやっても上手くいきっこないこんな人生。

生きていてもこの先何がある……っていう訳でもないのに。


……いっそこのまま死んでしまえたら……


その思いのまま交通量の多い横断歩道へ踏み出しかけた体を存外強い力で引き留められた。


何事かと思って振り返れば、そこにはあたしなんかよりずっと怖い顔をした人がいて。



「何してんのさ!」



何してる……って、今から父親と話するために夏稀君とも別れて一人その場所まで……


それなのに……あたし……




「す、すみません……?」




……信号無視で歩き出しかけてた……。


別に……助けてくれなくても良かった。
下手して死んだって……。

そんなひねくれたことを言えば目の前の彼はきっと怒るだろうから何も言わなかったけど。


そもそもこの時間帯に制服着た学生がいるんだろうと思えば今は、ちょうど通学時間で。

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