し ろ う さ ぎ




「……アンタが勝手してんなら葵だって勝手にするから」




それだけ言い放ってファミレスから足早に消える。


ねえ……葵はどうして生きてるの?

何のために……生きてるの?


情けないよ、悔しいよ……

まだ一人じゃ生きていけないんだから……

早く大人になりたい……でも、大切な愛情が欠けた傾斜するこの心で……誰かを愛せるのかな。

真っ直ぐに……。

こんな時、夏稀君はいつも何を言うわけでもないけど……葵の隣にいてくれた。

この人がいるから……葵はまだ生きていてもいいんだ……そう思えた。


でも……それはいつだって好意とイコールじゃない。


夏稀君は葵を大切にしてくれた。

でもそれは……特別な好きがあるわけじゃない。

可哀想だから、片親である自分と重なったから。

それでも、良かった。

母がいなくなって、ずっと独りぼっちだった葵には……例えそんな感情でも傍にいてくれる人が欲しかった。




「……会いたい、な……」



夏稀君に……そして、あの破天荒な彼女さんにも。


認めるしか、無いじゃない……。
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