し ろ う さ ぎ

あんなキラキラした真っ直ぐで素直な千鶴さんは……夏稀君とお似合いだ。

こんな……自分なんかより、ずっとずっと……。



「……本当に……来ちゃった……」




フラリ、足の赴くままに。

二人の通っている高校へとやって来ていた。


……会えたり、するかな。

会えたら……さっきまでの嫌なこと全部……少しの間でいいから忘れたい。




「今日って三年生遠足だったよねー」


「あ、そーじゃん!」


「先輩からお土産おねだりしよ~」




……遠足?

一番乗りとばかりにやって来た高校生三人の言葉に内心首を傾げる。


今朝会ってから遠足……行ったのかな?


それじゃあ……




「……会えないかー」




そう思ったものの、その場から動かずに立ち尽くしていた。

すると……



「……げ」


「はは。
露骨に嫌そうな声出すじゃんー?」



なんとあの人にバッタリ。
今朝ぶりの再会。



「そういや名前聞き忘れてたよな。
オレは榊原翔太!
そっちはー?」


「……竹原葵です」


「葵っていうのかー」



つっけんどんな口調もこの人は大して気にしないのかいつも通りで。

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