し ろ う さ ぎ
「千鶴さんに会いにでも来たんですかー」
「そう言う葵は千鶴の彼氏くんに会いに来たんじゃー?」
……いきなり名前呼びですか。
モテそうな男は言葉のスキンシップから違う、と。
夏稀君なんて葵のこと名前で呼んでくれるまでどれだけ時間がかかったことか……って。
まだそうやって夏稀君のことばっかり……。
「いいえ。
残念でしたー。
今日は三年生は遠足に行ってるらしいですよー」
「え……まじか?」
彼も……そうなのかな。
叶わない、それなのにまだ千鶴さんのこと諦めずにいるのかな……。
「ちぇー。
やっぱ駄目なんだなー」
「……駄目……?」
「もし今日……千鶴に会えたら諦めねえって決めてた。
逆に会えなかったら……オレじゃ、やっぱり駄目だったってこと」
「……そんなこと一人で賭けてたんですか」
「そんな可哀想なもん見る目すんなってのーっ!」
……葵も変わらないようなもんだけど。
「……ふふ。
そんなんじゃないですよ。
ただ……葵もそうやって考える時もあるなって……」
結ばれる運命じゃなかった。
そう片付けるしかない。
だってそれが……一番楽な方法だと思うから。
それなら仕方無いんだなって……言うしかないから。
「失恋同士、馬が合うのかもな~」
「一緒にしないでもらえますかー。
葵は失恋なんてしてませんからねー」