し ろ う さ ぎ

「うわぁ、強気だな?
こりゃー、千鶴も苦労させられるかもなー」


「……多分まだ好きでいるんだと思います。
このままならずっと……」




未練がましい……。

頭では分かっているけど、心はその答えを受け入れてくれない。



「……何となく分かるかも」



てっきりまた馬鹿にでもされるかと思ったけど……。


隣から聞こえてきたのは細々しい声だった。




「……オレもここにいるってことはまだ……ちゃんと踏ん切りつけられてないってことだしなー」




その言葉に黙って頷く。


離れる勇気が……どうしても出なくて。

独りぼっちになるのがまだ……どうしても怖かった。



あの時は思わなかったけど今なら……

千鶴さんの隣であんなに嬉そうに笑っていた夏稀君を見たら……

葵の勝手な事情で縛り付けちゃいけないって……思うようになった。



勇気が出るまであと一歩……その一歩が踏み出せたら……今より強い自分がいるように思える。




「まあ、オレのことは置いといて。
葵は親が心配とかしてねーの?」


「……しませんよ。
するわけも……ないです」


「なんでっ……」


「自分勝手……なんですよね、お互い」



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