白馬に乗った上司様!?
要件の済んだ中村さんの次の行動は早い。お愛想に少しの世間話をする、なんてこともなく、

「じゃあ、メールおくりますねぇ」

と言いながらくるりと振り返り、さっさと自分の席に戻っていった。

清々しい程にはっきりしていてちょっと感心さえしてしまうその後ろ姿を見送っていたら、不機嫌なため息が聞こえてきた、

「そこ、見惚れるとこじゃないと思いますよ」

鈴が鳴るような綺麗な声なのに、セリフは辛辣だ。

声の主、杉山緑ちゃんはまだ2年目だけど、評価の高い期待の女性営業マンだ。裏方の事務処理しか出来ない私もキチンと先輩としてたててくれる本当に出来た子で、性格も外見も良い。

「おはよう、緑ちゃん。けど、見惚れてるわけじゃないよ」

顔だけ振り返って挨拶する私に、緑ちゃんは最初より深いため息を吐く。

「おはようございます、千草先輩。じゃあ、嘘ついて先輩に仕事押し付けた相手の背中を見送ってたのはなぜですか?」

「見惚れたわけじゃないけど、感心してたのは確かかな。だってあそこまではっきりしてると、いっそ清々しいじゃない?」

「いやいや、清々しくなんてまったくないですよ。先輩、しっかりしてください!そんな優しい事言ってるから、あんなのに舐められるんです」
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