特進科女子と普通科男子
3
「由李、ほら行くよー」
「待って待って……あっ、シューズ忘れてるよ、宮ちゃん!」
「本当だ、ありがとう由李ー」
ご飯を食べたあと、私達は急いでテニスコートへと向かう。
五、六限目の体育は、普通科と特進科の合同授業。
男子はサッカー。女子はテニス。
そして私達はといえば、体育の先生からテニスコートの整備を任されている。
曰く、テニス部だから。
確か、普通科の子も何人か任されていたけれど、彼女達が準備に顔を出したことはない。
部活にも滅多に来ない。
よって、準備はいつも私と宮ちゃんだけ。
二人だとすぐには終わらないから、いつも早めに来ている。
「やっぱり二人だと大変だね」
「まぁ、普通科は面倒くさがって来てくれないしね。授業も真面目にしないし」
彼女の言葉に「そうだね」と共感した。
だけど、この時間は嫌じゃない……嫌じゃなくなったんだ。あの朝から、特別になった。
「ーー」「ーー」
遠くから男の子達の声がして、私の意識はぐんっと引き寄せられる。
その姿を見るだけで、どきどきと心臓がうるさい。
「相良君……」
その呟きは、あっさりと捉えられていたみたいで、彼女はやはり呆れたように首を振った。
それを追いかけるように、彼女のポニーテールがさらさらと揺れる。
「由李も好きだね。確かに格好良いけど、普通科だよ?」
「……相良君は、優しいもん」
唯一、彼への気持ちを打ち明けた彼女に向き合うように立って、その奥を友達と歩いている相良君をこそこそと見つめる。
毎回、盾として使われる彼女は、普通科のことをやはり良くは思わないみたいで。
だけど、決して「やめておきなよ」とは言わなくて、むしろこうして協力すらしてくれる。
「話しかけないの?」
「え、な、何て話しかければいいかな?」
「わ、分かんないよ。普通科の人っていつも何を話してるの?」
「それこそ分かんないよ」
そんな事を言っているうちに、相良くんはグラウンドのほうへ過ぎ去ってしまった。
結局いつも勇気を出せないまま。
私達は顔を見合わせて、二人して溜息を吐いた。
「待って待って……あっ、シューズ忘れてるよ、宮ちゃん!」
「本当だ、ありがとう由李ー」
ご飯を食べたあと、私達は急いでテニスコートへと向かう。
五、六限目の体育は、普通科と特進科の合同授業。
男子はサッカー。女子はテニス。
そして私達はといえば、体育の先生からテニスコートの整備を任されている。
曰く、テニス部だから。
確か、普通科の子も何人か任されていたけれど、彼女達が準備に顔を出したことはない。
部活にも滅多に来ない。
よって、準備はいつも私と宮ちゃんだけ。
二人だとすぐには終わらないから、いつも早めに来ている。
「やっぱり二人だと大変だね」
「まぁ、普通科は面倒くさがって来てくれないしね。授業も真面目にしないし」
彼女の言葉に「そうだね」と共感した。
だけど、この時間は嫌じゃない……嫌じゃなくなったんだ。あの朝から、特別になった。
「ーー」「ーー」
遠くから男の子達の声がして、私の意識はぐんっと引き寄せられる。
その姿を見るだけで、どきどきと心臓がうるさい。
「相良君……」
その呟きは、あっさりと捉えられていたみたいで、彼女はやはり呆れたように首を振った。
それを追いかけるように、彼女のポニーテールがさらさらと揺れる。
「由李も好きだね。確かに格好良いけど、普通科だよ?」
「……相良君は、優しいもん」
唯一、彼への気持ちを打ち明けた彼女に向き合うように立って、その奥を友達と歩いている相良君をこそこそと見つめる。
毎回、盾として使われる彼女は、普通科のことをやはり良くは思わないみたいで。
だけど、決して「やめておきなよ」とは言わなくて、むしろこうして協力すらしてくれる。
「話しかけないの?」
「え、な、何て話しかければいいかな?」
「わ、分かんないよ。普通科の人っていつも何を話してるの?」
「それこそ分かんないよ」
そんな事を言っているうちに、相良くんはグラウンドのほうへ過ぎ去ってしまった。
結局いつも勇気を出せないまま。
私達は顔を見合わせて、二人して溜息を吐いた。