特進科女子と普通科男子
散々サッカーで走り回った後、五限目終了のチャイムと同時に集合し、十分間の休憩となった。

それなのに、依然やる気のまま走り回る皆から少し離れたベンチに腰を下ろす。

「……あいつら、若いねぇ」

「おっさんかよ」

俺の独り言を拾って、隣に腰掛けた美鈴は首に巻いたタオルで汗を拭った。

二人して水筒を忘れて、喉はからから。

「あっつ……」

「……冷水機行ってくる」

「待って、俺も」

先に腰を上げた彼について、体育館横の冷水機で喉を潤す。

それから、外に設置してある手洗場でざばざばと髪を濡らすと、一気にひんやりして気持ち良かった。

彼も真似して隣でびっしょりと髪を濡らし、鬱陶しそうに前髪を搔き揚げた。

「おお、これが水も滴るいい男」

「あー、冷てぇ……気持ち良い」

髪がしっとりと水に濡れて、いつにも増して色気漂う彼を凝視していると、視線に気付いた彼は怪訝そうに顔を顰めた。

「……んだよ」

「何か、お前が言うと卑猥ーーった!」

それなりに強く小突かれて、恨めしくじっとりと睨めつける。

俺の恨みがましい視線を飄々と受け流す彼は、突然遠くに何かを見つけたように目を細めた。

彼の視線の先には、グラウンドのフェンスの向こう側に集まっているのはーー女の子達?

(あれは普通科と……特進科?)

その中に彼女の姿もあって、思わず頬が緩みそうになったところで、その険悪な雰囲気に眉を顰めた。

「あの馬鹿……」

ちっと悪態をついた美鈴は、僅かに焦りを滲ませていた。

珍しい彼の表情に一瞬呆気にとられたが、直ぐに気を取り直した。

「止めに行く」

「あぁ」

そして俺達は、走り出した。
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