特進科女子と普通科男子
保健室に着くと、彼女は丁寧にベッドに寝かせられていて、表情も落ち着いていた。

それに安心して、ようやく震えが治まり始めた。

「落ち着いた?」

相良君の優しい声に、こくんと頷く。

彼女を運んでくれた男の子は気を遣ってか、私から距離を置くように窓辺の椅子に脚を組んで座っていた。

「あの……驚いて、ごめんなさい」

不自然な距離からではあったが、男の子に頭を下げた。

「いや、俺も怖がらせて悪かった」

「美鈴は目つき悪いだけだからね」

相良君は茶目っ気たっぷりに片目を瞑ってみせた。

(……美鈴君、っていうのか)

二人はその後もずっと優しくて、未だに目を覚まさない彼女のことを一緒に待っていてくれた。

不意に立ち上がった相良君は、保健室の先生の私物と思われる牛乳を冷蔵庫から勝手に取り出す。

そして、慣れたようにホットミルクを作った。

「はい、どうぞ」

「あ、ありがとう」

カップの温もりにほっとして、私は彼にお礼を告げて受け取った。

すると何故か、二人は驚いたような顔で私を凝視した。

「あの……?」

反応のない二人の視線を一身に浴びることに、数十秒でいたたまれなくなった私は、逃げるように彼女が眠るベッドへと歩み寄った。
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