特進科女子と普通科男子
彼女との出会いは、中学一年生のとき。

私は昔から男の子にからかわれやすくて、年下の子や同級生、そして年上の人達にまで苛められていた。

苛めといっても、子供らしいことだけで。

例えば、帽子を奪って返してくれないだとか。

「ブス」「のろま」、なんて悪口を言われたりだとか。

逃げる私をずっと追いかけてきたり、髪の毛を引っ張られたりだとか、そんなことだけど。

当時の私は、それがすごく嫌で、怖くて。

ーー男の子は乱暴で、意地悪。

そういう定義が、いつの間にか出来上がっていた。

「ほーら、取れるもんなら取ってみろー!」

「か、返して……」

「えー?聞こえませーん!」

男の子達だけじゃない。

周りの女の子達も、呆れたようにくすくすと笑うだけで助けてはくれない。

酷いときには、「男子の気を引きたいだけでしょ」と誤解されて、口を聞いてくれなくなったりした。

(……誰も、味方なんていないんだ)

いつしか、そう思うようになった。

「のろま由李ー!こっこまーでおーいで!」

「止めてっ、返して……!」

その日も、男の子にペンケースを奪われて。

びくびくしながらも男の子を必死に追いかけた。

男の子は足が速くて、全然追いつけなかった。
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