特進科女子と普通科男子
6
意識を失ったままの、彼女の頬にかかった黒髪をそっとよける。

いつも強気な彼女はこうして眠っているときは無防備で、少し幼く見えた。

私はくるりと振り向いて、相良君と美鈴君に尋ねた。

「どうやって、宮ちゃんを止めたんですか?」

さっき、私は殴られなかった。あの女の子達も、相良君達も。

代わりに、当の本人が意識を失ってその場は収拾したようだけれど、どうして彼女は意識を失ったのだろうか。

私が殴られる以外のことで、彼女が止まる方法があるのか。

期待を胸に、縋るように相良君を見つめた。

すると、相良君は困ったように「うーん」と首を捻り、苦笑した。

(そうか。あの時、宮ちゃんの傍にいたのは美鈴君だもん)

記憶を辿って思い至り、今度は美鈴君に視線を向けた。

美鈴君は視線に気付いていないのか、素知らぬふりで窓口のほうを眺めている。

けれど、カーテンは閉まっているので、不自然極まりない。

「……その方法なら、宮ちゃんを助けられるかもしれないの」

何をしても止まらない彼女を、誰も傷付けずに止めた唯一の方法。

そして、それは美鈴君にしか出来ないかもしれないということ。

「……助ける?」

少し間を置いて、相良君は私の言葉を反芻するように呟いた。

「宮ちゃんは一度手を出すと、自分の意識がなくなるまで止められないって言ってたんです」
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