特進科女子と普通科男子
「と、通してぇ……」

人見知りーーそれも男性限定の、いわゆる男性恐怖症。

男の子はみんな背が高くて、身体がごつごつしていて、そして意地悪だ。ゆえに苦手。

縮こまる私に伸びてくる手にぞっとして、全身が粟立つ。

恐怖で足が竦み上がり、じわりと涙が浮かんだ。

「あはは、泣いちゃったー?可愛いー」

迫り来る男の子の手から逃れたくて後ずさると、とんっと背中に何かが当たって、衝撃で涙がぽろっと流れた。

慌てて振り向くと、目の前に映ったのはーー黒い学ラン。

第三ボタンまで開かれた白いシャツ。

(ーー普通科の、制服だ)

そう気付くと、出かかっていた謝罪の言葉が喉の奥に引っ込んでしまった。

「おはよ」

頭上からは、やはり男の子の声がして。

私は金縛りにあったみたいに動けなくなった。

だけど、それは恐怖からじゃなくて。

ーー低く響くような声に、思わず聴き惚れてしまったからだと思う。
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