特進科女子と普通科男子
7
ーー放課後。

「宮ちゃん……あの、本当に?」

「何言ってるの。由李が"お礼を言いたい"って言ったんだよ?」

「言ったけどー!」

現在、昇降口前。

目の前には普通科の校舎。

昇降口からは人が溢れ、普通科と特進科が出会うため、喧嘩が多くなる時間でもある。

そんな状況の中、臆することなく普通科の校舎へ向かおうとする宮ちゃんに、「無理だよ!」と足を踏ん張って抵抗していた。

それは、終礼が終わった後。

彼女は何を思ったのか、終礼の挨拶を終えるとすぐに私の机に駆け寄った。

「ほら、早く帰る支度して」

「うん。でも、どうしたの宮ちゃん。何か用事?」

「い、い、か、ら」

そう急かされて、教室を飛び出すように出てきた。そして、冒頭に戻る。

「明日になって、勇気が出なくなったら困るでしょ?」

「そうだけど……」

「あのね、由李。相良君は普通科だけど、特進科の女子にも人気があるらしいの。知ってた?」

「"も"ってことは……普通科の女の子にも?」

「当たり前だよー」

そうだったんだ。相良君は優しいし、素敵だもんね。

何となく分かっていたことだけど、それを嫌だと思う自分がいることに驚いた。

(普通科の女の子達は、相良君のこと、もっと近くで見られるんだ。あの笑顔も……)

「ね、行こう。私がいるでしょう?」

「宮ちゃん……!」

彼女だって、普通科の人が苦手なのに。

それでも、私の為に一緒について来てくれる気なんだ。

私は顔を上げて、抵抗を止めた。

そして、強気に微笑む彼女の手を、自分から握った。

「宮ちゃん、ありがとう。大好き」

「……っ、もう由李!他の人の前で、そんな可愛い顔したら駄目だからね!」

「えぇ、してないよ」

「してるのー!」
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