特進科女子と普通科男子
頑張っても意味なくて、堪えきれなかった涙がとうとう零れ落ちた。

一つ零れたところが線になって、伝って。

前が見えなくなるくらい溢れた涙が、ぼろぼろと流れる。

「やべ、泣き顔まじでそそる……」

"俺のものに、なってくれないなら……"

突然、背後から口を塞がれて、人気のない校舎裏に引き込まれたあの恐怖。

荒い呼吸。ぎらついた瞳。

手首が折れそうなほど強い力で拘束されて、為す術もなく服を脱がされる絶望。

誰もいない。誰も助けてくれない。逃げられない。

「いや……っ!」




ーー"大丈夫。"


低く響くような声が、頭の中に蘇る。

男の子なのに、触れられても平気で。

おどけるような笑顔を、もっと見ていたくて。

ーー助けて。

私は夢中で、彼の名を呼んだ。



「さが、ら、君……相良君っ……!」







「ーーもう大丈夫」
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