特進科女子と普通科男子
9
「宮ちゃん、昨日はごめんなさい……」
「何言ってんの、私こそごめんね」
入院中は翌日まで目が覚めず、お見舞いに来てくれていたらしい三人にお礼が言えていなかった。
安静のため一日入院して、そして今日のお昼から登校したというわけだ。
宮ちゃんは一番に出迎えてくれて、一日中私を心配し続けた。
「無理せず、休めば良かったのに」
「平気だよ。それに、宮ちゃんに会いたかったの。あの時も、この前も、いつも守ってくれてありがとう」
「ううん……本当に、無事で良かった」
彼女は、ぎゅっと私に抱き着く。心配そうに上目遣いに見上げる彼女が可愛くて、へらりと笑う。
隣の校舎からは、相変わらず派手な音が聞こえてくる。
彼女もいつも通り、呆れたように見遣るだけだ。
ふと、向かいの校舎の屋上を見上げてみた。
(……いない、よね)
最初は、名前も知らなかったのに。
あの低いフェンスに凭れ掛かっていた、後ろ姿。
いつの間にかこちらを見て、手を振っていたっけ。
その手と繋いだ、自分の右手を宙にかざす。
彼の手は、私の手を包み込んでしまうくらい大きかった。そして、とても優しかった。
会えない一日が、こんなにも寂しくなるなんて知らなかった。
右手を下ろして、また屋上を見上げる。
授業が始まっても、屋上の開かない扉をずっと見つめていた。
「何言ってんの、私こそごめんね」
入院中は翌日まで目が覚めず、お見舞いに来てくれていたらしい三人にお礼が言えていなかった。
安静のため一日入院して、そして今日のお昼から登校したというわけだ。
宮ちゃんは一番に出迎えてくれて、一日中私を心配し続けた。
「無理せず、休めば良かったのに」
「平気だよ。それに、宮ちゃんに会いたかったの。あの時も、この前も、いつも守ってくれてありがとう」
「ううん……本当に、無事で良かった」
彼女は、ぎゅっと私に抱き着く。心配そうに上目遣いに見上げる彼女が可愛くて、へらりと笑う。
隣の校舎からは、相変わらず派手な音が聞こえてくる。
彼女もいつも通り、呆れたように見遣るだけだ。
ふと、向かいの校舎の屋上を見上げてみた。
(……いない、よね)
最初は、名前も知らなかったのに。
あの低いフェンスに凭れ掛かっていた、後ろ姿。
いつの間にかこちらを見て、手を振っていたっけ。
その手と繋いだ、自分の右手を宙にかざす。
彼の手は、私の手を包み込んでしまうくらい大きかった。そして、とても優しかった。
会えない一日が、こんなにも寂しくなるなんて知らなかった。
右手を下ろして、また屋上を見上げる。
授業が始まっても、屋上の開かない扉をずっと見つめていた。