特進科女子と普通科男子
10
悪いと思いながら立ち聞きしていたことは、決して褒められたことじゃないけど。
良い機会だと思ったのは、ただの直感。
「……美鈴君とお友達だったの?」
教室から聞こえてくる彼女達の話に、美鈴がいつもの無表情を崩したから。
ーーあ、やっぱりって、思った。
夕方なのに。屋上の風に靡く髪を押さえる彼女が眩しくて、目を細めた。
「……相良君?」
「ん?」
「な、何もない」
(何それ、可愛すぎか……)
凄く近い距離にどきどきする。
あー、キスしたい。
だって、思春期の男の子ですから。
好きな子と二人きりで、身動ぎしたら当たりそうな距離感って。もどかしい。
ーー付き合ってもないのに、出来ないけどね。
どうせヘタレですよ、と心の中で不貞腐れる。
美鈴にも散々言われた言葉だ。
あぁ、彼女が俺を好きになってくれたらいいのに。
「……由李ちゃんは、好きな人いないの?」
「へ!?」
「あ、その反応はいるね」
聞いといて、答えが怖いだなんて。
平気なふりして笑ってみたけれど、心の中はばくばくと激しく音を立てて暴れ回る。
知りたい。知りたくない。
答えないで。
そう思う俺は、きっと誰より弱い。
「……うん」
(……俺、馬鹿なの。何、自分で聞いて落ち込んでんだよ)
恥じらうように俯いた彼女を今すぐ抱き締めて、俺だけのものにしたい。誰にも渡したくない。
てか、俺じゃダメなの?悪いとこ全部直すよ。勉強もするしさ。
(はぁ。何なのそいつ……羨ましすぎでしょ)
きっと、彼女に釣り合うようなイケメンで、頭も良くて。
彼女が好きになる人だから、きっと優しい奴なんだろうけどさ。
「羨ましいな、そいつ」
全力で排除したい。
そんな不穏な思いを知ってか知らずか、彼女はきょろきょろと視線を漂わせた後で、「相良君」と呼ぶ。
素早く考えを振り払って、彼女の視線に合わせるように首を傾げた。
「何?」
「さ、相良君は、好きな女の子……いるの?」
消え入りそうな小さい声が、真っ直ぐに俺の胸を貫いた。
良い機会だと思ったのは、ただの直感。
「……美鈴君とお友達だったの?」
教室から聞こえてくる彼女達の話に、美鈴がいつもの無表情を崩したから。
ーーあ、やっぱりって、思った。
夕方なのに。屋上の風に靡く髪を押さえる彼女が眩しくて、目を細めた。
「……相良君?」
「ん?」
「な、何もない」
(何それ、可愛すぎか……)
凄く近い距離にどきどきする。
あー、キスしたい。
だって、思春期の男の子ですから。
好きな子と二人きりで、身動ぎしたら当たりそうな距離感って。もどかしい。
ーー付き合ってもないのに、出来ないけどね。
どうせヘタレですよ、と心の中で不貞腐れる。
美鈴にも散々言われた言葉だ。
あぁ、彼女が俺を好きになってくれたらいいのに。
「……由李ちゃんは、好きな人いないの?」
「へ!?」
「あ、その反応はいるね」
聞いといて、答えが怖いだなんて。
平気なふりして笑ってみたけれど、心の中はばくばくと激しく音を立てて暴れ回る。
知りたい。知りたくない。
答えないで。
そう思う俺は、きっと誰より弱い。
「……うん」
(……俺、馬鹿なの。何、自分で聞いて落ち込んでんだよ)
恥じらうように俯いた彼女を今すぐ抱き締めて、俺だけのものにしたい。誰にも渡したくない。
てか、俺じゃダメなの?悪いとこ全部直すよ。勉強もするしさ。
(はぁ。何なのそいつ……羨ましすぎでしょ)
きっと、彼女に釣り合うようなイケメンで、頭も良くて。
彼女が好きになる人だから、きっと優しい奴なんだろうけどさ。
「羨ましいな、そいつ」
全力で排除したい。
そんな不穏な思いを知ってか知らずか、彼女はきょろきょろと視線を漂わせた後で、「相良君」と呼ぶ。
素早く考えを振り払って、彼女の視線に合わせるように首を傾げた。
「何?」
「さ、相良君は、好きな女の子……いるの?」
消え入りそうな小さい声が、真っ直ぐに俺の胸を貫いた。