特進科女子と普通科男子
目を見開いて呆然と見つめれば、彼女はぱっと俯いてしまう。

ーー俺の好きな人、気になるの?

(まさかね……?)

単に、俺がした質問を返しただけかもしれない。俺と同じ感情はないかもしれない。

だけど、期待せずにはいられない。

彼女の頬が赤らんで見えるのは、俺の気のせいか。夕日のせいか。

ーーそれとも。

「……いるよ。凄く、好きな子」

どんな反応も見逃したくなくて、彼女の正面に回った。わざと試すような言い方をしたのは、紛れもなく俺が弱いせい。

だから、もっと確信をちょうだい。


「そ、そうなんだ……?」

期待と不安が入り混じるような彼女の表情に、胸が高鳴る。

自分と同じ気持ちかもしれない。

もっと近付きたい。触れたい。

確かめたい。

もう一歩、踏み込みたい。


「……誰だと思う?」

「え……?」

ーー好きだ。

彼女の笑顔も、声も、仕草や優しさ、弱さも全部。

だけどそれは、後付けに過ぎなくて。

(……ただ、好きだから、仕方ない)

溢れそうな想いが、彼女の心を奪おうとする。

彼女の小さな手を引くのは、いつだって俺でありたい。誰よりも傍にいたい。

優しくしたい。守りたい。

身も心も、その全て。


「当ててみて。俺の、好きな人」

「っ、そんなの……分かんない」

彼女の震える唇に引き寄せられるように、ゆっくりと顔を寄せた。

「……分かんない?」

どちらかが動けば、唇が触れる……そんな距離。

彼女が俯こうとするのを、両手で頬を掬って優しく阻止する。

「こっち見て」

彼女の潤んだ瞳が揺れたのを見届けて、心が満たされるのを感じる。

「ぁ……相良く、」

ーーあと、1cm。








「ーーはい、ストーップ!」
< 46 / 49 >

この作品をシェア

pagetop