特進科女子と普通科男子
ーーバァンッ!

盛大な音で開かれた扉に、私も相良君も声も出ないほど驚いた。

それから、「うわぁ!」と彼の胸を押して距離を取った。ごめんなさい!

いつもの優しい笑顔とは違う、少し悪戯っぽい微笑みに見惚れていた。

近付いた距離にどきどきして、でも心地好くて。

火照るくらい熱かったのに、押し退けて出来た二人の隙間に通る風の冷たさに、我に返った。

そして、それを寂しいと思う身勝手な気持ちにも。

(うわぁ!うわぁ!)

そんな自分をはっきりと認識すると、一気に爆発しそうなくらいの熱がぶわっと顔に集まった。

「手が早いな」

「未遂だっつの」

扉に寄りかかって、にやにやと笑う美鈴君に恥ずかしがることもなく、むしろ恨めしそうな相良君。

私はあまりの羞恥で、今にも足が崩れてしまいそうになった。

駆け寄ってきてくれた宮ちゃんは、心配そうに私の手を握る。

「由李、大丈夫?何もされてない?相良君、手が早いらしいから」

「待って、宮日ちゃん。それ誰情報?」

「困った男だ」

「お前か」

「制裁!」と叫んで、美鈴君を追いかけていく相良君の背中を見つめていれば、隣で彼女が「ふふっ」と笑った。

「ねぇ、由李……普通科って、やっぱり馬鹿だよ」

そう言った彼女の表情は、今までで一番晴れやかで、いつもより大人びて素敵だと思った。

「おい、由李ちゃんに誤解されるから訂正しろ」

「水原さん、気を付けろよ」

「え?えっと、うん」

(美鈴君、私の名前知ってたんだ!)

あんなに失礼な態度をとってしまったのに、話しかけてくれたのが嬉しい。

相良君のお友達だから、私も仲良くしたいと思う。

「いや、俺別に手が早いわけではないからね?」

「説得力薄いわよ」

「宮ちゃん……もしかして、見てた?」

「大丈夫。未遂でしょ?」

恥ずかしさに、ぼふっと顔から熱が弾ける。

「も、もうしないもん……」

「えっ」

即座に反応した相良君に対して、くつくつと意地悪く笑う美鈴君と、にやにやと揶揄う宮ちゃん。

二人は、こうして見ると凄くお似合いだ。

だから、「良かったね」と微笑んだら、彼女は照れ隠しのように、両手で私の頬をぺちっと挟んだ。
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