特進科女子と普通科男子
しばらく皆でおしゃべりして、沈んでいく夕日を眺めた。

相良君の柔らかそうな茶色の髪が、そよそよと靡く。

穏やかな茶色の瞳。すっと通った鼻筋。すらりと高い身長に、低く響くような声。

宮ちゃんから頬を解放されて、美鈴君とじゃれる彼をじっと見つめた。

(……やっぱり、凄く格好いい)

いつもピンチの時に助けてくれるヒーロー。

今までは、宮ちゃんだけだった。

でも、あの日から私の世界が広がった。

「大丈夫」って言葉は、まるで魔法のよう。

頼もしくて、優しくて、ヒーローみたいにかっこいい人。

(……私の好きな人は、相良君だよ)

彼を目の前にすると、消えてしまう言葉。心の中では、すんなりと言えるのに。

すると、突然振り向いた彼と目が合って驚く。私の心の中が見えてしまったのかと思った。

彼の優しい微笑みだけで、心臓が忙しい。

ぱくぱく、と彼の形の良い唇が「好き」と動いて。

今度こそ、ぺたんと足が崩れた。

「え、由李!?」

びっくりしたように目を丸くさせた彼女が、膝を抱えて私と目を合わせる。

覗き込んだ彼女の瞳には、真っ赤な顔をした私が映っているのだろう。

「……ふぅーん」

私の思考を見透かしたように、怪しく微笑む彼女に。

誤解だよ、と訳も分からず言い訳しようと口を開いた。

けれど、それより先に。

「宮日」

その声に、彼女が振り向いた。

美鈴君の声だと気付くと、さっきまでとは少し違うどきどきがした。

(美鈴君……「宮日」って呼んでるんだ)

彼があんなに優しい表情をする人なんだと、初めて知った。とても嬉しい発見だ。

ーーそして、彼女も。

「帰るか」

「っ……うん」

その顔は、恋する女の子だ。

いつも可愛い彼女が、もっともっと可愛く見える。

彼女は、ぎこちなさそうに彼の側に歩いていく。

その後ろ姿を、どきどきしながら見守った。
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