特進科女子と普通科男子
彼女が、彼の隣に到達した時。

「っ、美鈴……!」

「じゃあな」

ーーバタン。

静かに音を立てて、扉が閉まる。

(……美鈴君、あんなことするんだ)

彼は隣に立った彼女の肩をぐいっと引き寄せ、颯爽と扉の向こうに消えてしまった。

残された、私と相良君。

「だから、どっちが」

くすくすと笑う相良君に、どきっと胸が高鳴る。

……この人の笑顔は、心臓に悪い。

「二人、上手くいって良かったね」

「そうだね」って笑ってくれると思ったのに。

彼は何も言わず、真剣な表情をしていた。

だから私も何となく、真っ直ぐに彼を見つめ返した。

「ねぇ、由李ちゃん」

いつの間にか、彼はさっきみたいにすぐ近くにいて。

座り込んだままの私の前に、片膝をついた。低く響くような声に、酔わされる。

微かに熱を孕ませた瞳に、溶けてしまいそう。

その瞳に。その唇に。

ーー惹き付けられる。

「俺の彼女になってくれますか?」

彼の顔が、涙でぼやける。

ちゃんと、「はい」と言えただろうか。

だけど、彼がくすっと優しく微笑んだから。



ーー1cmの距離は、全て埋まって。



触れた温もりに、相良君への「好き」を全部乗せた。
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