特進科女子と普通科男子
予鈴が鳴って、席に着く。

それは、特進科だから当たり前の事なんだと気付いたのは、入学してから三日も経たない頃からで。

旧校舎に目をやれば、相も変わらず、何かをしでかしては楽しそうに笑う彼らが見えるだけ。

ふっと視線を外して、カーディガンの袖を引っ張った。

手の平半分を隠した袖に顎をのせて、両肘をつく。

本鈴が鳴るまでの五分間。

先生が本鈴と共に教室に入り、適当に挨拶をした直後、黒板にすらすらと白い文字が羅列する。

勉強は好きだ。努力すればするだけ、知識が身に付いてゆく。

なのに。

今日はシャーペンの走る音が、やけに耳につく。

(……あ、誰かペン回し失敗した)

カシャ、と小気味よい音は暫く何度が続いた。

「えー……であるからーー」

先生の方に目を向けながら、耳はペンの落ちる音のほうをしっかりと捉えていた。

意味もなく、筆箱から消しゴムを取り出す。

消しゴムのケースを外して、油性マジックの細いほうを開けてーー閉める。

(小さい頃、流行ったっけ。誰にも触れられずに使い切ったら……)

教室の時計の針が、8時16分で止まっている。

腕時計は現在9時ぴったり。一限目が、始まったばかり。

カチカチとシャーペンの芯を出したり戻したり。

……今日は、集中出来ないみたい。
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