銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
1、運命の出会い
「う〜ん、眠れない」

寝返りを打って、ハーッと溜め息をつく。

何度目を閉じても眠れなかった。

宮殿へ行ったお父様が深夜になっても戻ってこない。

「……心配だわ」

ベッドに横になっても、父の乗った馬車の音がしないか耳をそば立ててしまう。

父は公爵で、このケンジット王国でも王家に次ぐ有力貴族だ。

私はそのひとり娘のセシル。

ハチミツ色の長い髪に柘榴のような赤い瞳。

この容姿はリンフォード家の直系の証で、この国では珍しくうちの家系特有のものらしい。

十五歳の私は、来月社交界デビューを控えている。

本来ならその緊張でドキドキしているところだけど、最近、国情が不安定でそんな呑気なことは言っていられなくなってきた。

国王のサーロン二世は民衆に重い税を課しているにもかかわらず、自分は毎晩のように宴を開いて贅沢三昧。
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