銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
俺の愛称を知っているのは、彼女がセシルだからだ。

瞳の色やあの光り輝く金髪、それに……俺の黒い爪を見ても驚かなかったからセシルに間違いないとは思ったが、これではっきりした。

だが、今は追及するのはやめよう。

追及すれば俺の前から逃げ出すかもしれない。

それだけは絶対に阻止しなければ……。

せっかく出会えたのに、ここで逃すものか。

それにしても、なぜ男爵令嬢の振りをしているのだろう?

今の彼女が悲しそうな目をしているのも気になる。

初めて会った時、彼女はとても愛らしく、溌剌としていて、その目は生気に満ちていた。

彼女の両親が亡くなってからどういう生活をしてきたのか、探る必要があるかもしれないな。

知りたいことは沢山ある。

セシルのナイトだったウィングは元気にしているだろうか?

幸せに暮らしているか?とか、何か困っていることはないか?とか……。
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